LAに住んで15年。Wilshire Blvd.沿いのあの、赤と銀の帯がうねる異様な建物の前を、何百回通り過ぎたでしょうか。気になっていたのに、なぜか一度も入ったことがなかったPetersen Automotive Museum。今回ついに足を踏み入れて分かったのは、ここは車好きのための場所ではなく、「車という芸術品」を見せるための美術館だったということでした。
車好き以外には後回しにされがち(笑)
Wilshire Blvd.を走ればいやでも目に入る、あの波打つファサード。LACMAやAcademy Museumのすぐ徒歩圏内にあるのに、隣の2つには行っても、なぜかここだけ後回しにしていた方は多いのではないでしょうか(私です)。
「車かぁ。車はそんなに興味があるわけじゃないからなぁ。ま、そのうちに。」
結論から言うと、車好きでなくてもぜひ1度は行って欲しいミュージアムでした。
LACMA、Academy Museumと3館まとめてハシゴするのもおすすめです。
車は、芸術品だった!

エレベーターで3階まで上がると、最初に飛び込んでくるのが「AMERICA: Cars That Moved a Nation」という展示でした。
手前には1900年ごろの「Duryea Phaeton」。アメリカ最古の自動車メーカーの一つ、Duryea Motor Wagon Co.が手掛けた、馬車の面影を色濃く残す一台です。
その奥には2025年の「Czinger 21C V Max」。ロサンゼルス発のCzinger Vehiclesが、3Dプリンティングを駆使した独自の生産方式で作り上げた、最高速度253mphのハイパーカーでした。同じ"アメリカ製の自動車"という括りに、125年分の進化がいきなり並んでいて、面食らいました。
車の"展示のされ方"にも驚かされました。スポットライトの当て方も、キャプションの書き方も、完全に美術館のそれです。中でも1948年の「Norman Timbs Special」――アールデコ調に磨き上げられた流線型のボディは、止まっているだけで動いているように見えます。

黄色いフェラーリ365 GTB/4「デイトナ」、赤いランボルギーニ・ミウラ、白いランボルギーニ・カウンタックが並ぶスーパーカーコーナーも、彫刻の展示室のような佇まいでした。



こりゃ、車好きにモテるわけです。
映画の中の車たち ― 一番惹かれたのは、実はフェラーリじゃなかった

バットモービル、『Back to the Future』のDeLorean、『Matrix Reloaded』でTrinityが乗ったドゥカティ996――名だたる劇中車があちこちに展示されており、映画好きなら時間を忘れるミュージアムです。



でも、個人的に一番「うわぁ、かっこいい」と唸ったのは、黒い"フェラーリ"風のオープンカーでした。近づいてキャプションを読むと、まさかの正体は――『Miami Vice』でDon Johnson演じるSonny Crockett刑事が乗っていた「1983 Mardikian 350 GTS」。フェラーリ365 GTS/4デイトナに似せて作られた、コルベットのシャーシを使ったレプリカでした。本物のフェラーリより、レプリカの方に心を掴まれるとは思いませんでした。

日本車、ほぼありません(でもレーシングコーナーには)
これだけ広い館内を回っても、日本車はほとんど見当たりませんでした。唯一、数台展示されていたのが、レーシングカーのコーナーです。

SUZUKIのパイクスピーク・ヒルクライム参戦マシン(日本人ドライバー田嶋 伸博が運転)や、トヨタのオフロードレーストラック「Tundra Pro 4」など、"戦うための日本車"が数台。普段の実用性とは真逆の、剥き出しの走行性能で勝負する日本車の姿は新鮮でした。

確かに日本車ってミュージアムに展示される「芸術品」というより「実用品」なんでしょうねぇ。
自動運転タクシー「Waymo」も歴史も

Waymoの展示コーナーでは、初期の丸っこいコンセプトカーから、現行のジャガーI-PACEベースの車両まで、自動運転車の進化がタイムラインで並んでいます。

車載センサーの視点や、車内から見た風景を再現した展示もあり、普段何気なく街で見かけているWaymoの「中身」を覗けたのが面白かったです。
そういえば最近LAでは、このポッド型というか、箱型のWaymoも見かけるようになりました。

Amazon傘下のZooxは近日中にLAでローンチされるらしいし、TeslaのCyberCabもおそらく時間の問題(サンフランシスコでは導入済み)。
日本での自動運転タクシー導入も動き出し、まだまだ目が離せない領域です。
「ベンツ」と一言で言うけれど

1階のメルセデス・ベンツコーナーが、個人的にはこの日いちばんの驚きでした。
1886年、Carl Benzが特許を取った3輪の「Patent-Motorwagen」――自転車に毛が生えたような姿の"元祖自動車"から、1938年ごろの流線型クーペ、そして1989年ル・マン参戦のレーシングカー「ザウバー・メルセデスC9」まで。"ベンツ"誕生から140年、"メルセデス・ベンツ"になって100周年――今年(2026年)はちょうどその節目の年だそうです。








ミュージアムショップはちょっと微妙?!

最後に立ち寄ったショップで足が止まったのが、ヴィンテージ風ナンバープレートのコーナーです。アメリカ各州のバニティプレートに混ざって、なぜか日本のナンバープレートが3枚。しかも全部、群馬でした。「群馬58 よ13-137」「群馬37 お63-887」「群馬55 13-954」――東京でも大阪でもなく、なぜ群馬ナンバーなんでしょう...。

ピンバッジのコーナーには、アラレちゃんやマリオ、『Back to the Future』のピンバッジも。真面目な自動車史の展示のあとに、こういう脱力系のお土産があるのがPetersenらしいところです。


15年越しで足を踏み入れたPetersen Automotive Museumは、車好きじゃなくても楽しめる、れっきとした「美術館」でした。
LACMA、Academy Museumと合わせて徒歩圏内なので、LAでミュージアムホッピングをするなら外せないルートの一つに加えてみてください。
Petersen Automotive Museum
1994年6月11日、雑誌出版者Robert E. Petersenと妻Margieによって設立されました。建物自体はもともと1962年に西武百貨店のアメリカ1号店としてオープンし、その後1986年までOhrbach'sという百貨店として使われていた歴史的建造物です。窓が少なく展示物を直射日光から守れる構造が、そのままミュージアムに転用された理由だそうです。
あの波打つ外観は2015年、建築事務所Kohn Pedersen Fox(KPF)による大規模改修で誕生したものです。ステンレスと"ホットロッド・レッド"に塗装されたアルミニウムでできた308本のリボン状パネルで建物全体を覆っており、風洞実験の煙の流れをモチーフにデザインされています。館内は3フロア25以上のギャラリーに加え、地下には別料金制の希少車コレクション「The Vault」もあります。
- 住所:6060 Wilshire Blvd, Los Angeles, CA 90036
- 公式サイト:petersen.org
- Instagram:@petersenmuseum

