2026年5月、LACMA(Los Angeles County Museum of Art)の新棟「David Geffen Galleries」がついに一般公開されました。設計はプリツカー賞建築家Peter Zumthor。何度も足を運んできたLACMAですが、今回はリニューアル後初訪問です。


そもそもLACMAは1つの建物ではありません。
David Geffen Galleries(今回リニューアルオープンした新棟)、BCAM(Broad Contemporary Art Museum)、Resnick Pavilion、そして現在改修中のPavilion for Japanese Art(日本館)という4つの建物と、《Urban Light》をはじめとする屋外アート・広場からなる複合施設です。
今回はその全体をぐるっと歩いて回ってきたので、建物ごとに紹介していきます。
郡立、だけど運営は非営利団体
LACMAは「郡立美術館」と呼ばれますが、正確には土地・建物をロサンゼルス郡が所有し、運営はMuseum Associatesという非営利団体が担う、公民連携のミュージアムです。
だからこそ実現しているのが、月・火・木曜15-18時、金曜15-20時にLA郡住民は入場無料という太っ腹な制度(要ID、水曜休館)。「平日夕方はタダで美術館」という選択肢がある街に住んでいることを、改めて再認識しました。
夏の風物詩「Jazz at LACMA」でピクニック

2026年で35周年を迎えたJazz at LACMAは、5〜10月の毎週金曜18-20時、Urban Light裏のSmidt Welcome Plazaで開催される無料コンサートです。
予約不要、ピクニックOK。
《Urban Light》裏に並べられた椅子に座るも良し、芝生や空きスペースにチェアやピクニックシートを拡げるも良し。
Plazaにはフードトラックも複数台出ているので、手ぶらで訪れても大丈夫。

夕暮れのジャズに浸る―これぞLAの夏、という時間を過ごせます。
屋外アートも見どころ

LACMAといえばやっぱり《Urban Light》。Wilshire Blvd.に面したこのインスタレーションは、日中の白い姿も、夜に灯る姿も、どちらも一度は見ておきたい定番の撮影スポットです。

もう一つの名物が、Michael Heizerによる巨大な一枚岩の彫刻《Levitated Mass》。地面の溝の上に342トンの岩が浮かんでいるように設置された、LACMAらしいスケール感のある屋外アートです。


そして今回新しく気づいたのが、David Geffen Galleries前に立つ黒い幾何学的な彫刻オブジェ《Smoke》はTony Smithの作品。実はこれ、リニューアル前は館内に展示されていた作品で、今回の改修を機に屋外展示に生まれ変わりました(太っ腹!)。

LACMAの敷地は6時-22時まで解放されているので、屋外アートはミュージアムの営業時間外でも楽しめます。
敷地内の散歩している人たちをよく見かけるのですが、アートが近隣住民の日常生活に溶け込んでいる感じがいいなぁと思います。
David Geffen Galleriesの中は、まさかの組み合わせだらけ
新棟の中を歩いて驚いたのは、時代もジャンルも国も飛び越えた展示の並び。
中でも目を引いたのが、Jean-Baptiste Carpeauxによる彫刻《Study for The Dance》(1865年頃)。荒々しい質感の石膏像が、赤い壁の展示スペースでひときわ存在感を放っていました。

Pierre Bonnardの絵画《Boats in the Evening, Cannes》(1924年)にも惹かれました。どちらもA. Jerrold Perenchio氏からの寄贈作品で、こういう個人コレクションの厚みも新棟の見どころの一つです。

ほかにも、California Designのコーナーには黄色いサーフボードと、Robert Rauschenbergが手がけた光る"Chrysler Airflow"の壁面作品《Profile Airflow》が同居。

チベット仏教の祭壇布の下にはアンティーク家具がずらり。

窓際には3体の胸像がカーテン越しの光を浴びていたり、

アーツ・アンド・クラフツ様式の暖炉やミッドセンチュリーの椅子・チェイスラウンジが並ぶコーナーも。

壁一面のパッチワークキルトのコーナーがあったり、光の差し込み具合も美しかったFrancis Baconの三連画、Duke Kahanamokuのヴィンテージ木製サーフボード《DUKE》まで、ジャンルを問わず次々に目に飛び込んできます。



アフリカ・古代エジプトのコーナーにワクワク

個人的に一番テンションが上がったのが、このコーナー。
マリ共和国のバマナ族による祭祀彫刻《Boli(Altar)》をはじめ、コンゴ民主共和国など複数の地域・部族のマスクがずらりと壁に並ぶ展示室は、造形の力強さに圧倒されます。

その先には、青い壁の古代エジプトの展示室。彩色が美しく残る人型の木棺が2体並んで立てられているコーナーと、蓋を開けた棺の内部装飾を間近で見られるコーナーがあり、背景には公民権運動をモチーフにした現代のレリーフ壁画も。古代エジプトと現代アメリカの黒人史が同じ部屋の中で呼応するような、意外な取り合わせでした。


現代アート好きはBCAMへ
BCAM(Broad Contemporary Art Museum)は、ダウンタウンの原題美術館The BroadでおなじみのEli and Edythe Broad夫妻が資金提供したギャラリーで、現代アートが充実。
Georgia O'Keeffeの《Horse's Skull with Pink Rose》(1931年)や、Jasper Johnsの《Figure 7》(1955年)など、アメリカ現代美術の名だたる作品が並びます。


最上階の階段からはAcademy Museumの丸いドームが見え、夜になるとオレンジ色にライトアップされた姿を望める、隠れたビュースポットでもありました。

Resnick Pavilionでは巨大インスタレーションと特別展
Resnick Pavilionの常設で毎回目を奪われるのが、Richard Serraによる錆びた鋼板の巨大インスタレーション《Band》。人がすっぽり入れるほどのスケールの鋼板が並ぶ空間は、静かな迫力がありました。

同じ1FにはDavid Hockney(1960〜70年代のLAのプールを描いた絵で知られる、イギリス出身・LA在住の画家)の《Mulholland Drive: The Road to the Studio》(1980年)も。Hockneyは2026年6月に88歳で亡くなったばかりで、キャプションの生没年が「1937-2026」と刻まれているのを見て、LAを描いたこの一枚が急に特別なものに思えました。


訪問時に開催されていた特別展(版画展)では、葛飾北斎の《南風快晴(赤富士)》も展示されていて、日本美術ファンは要チェックです。

日本館は改修中。でも日本美術がゼロになったわけじゃない

日本館(Pavilion for Japanese Art)は今、2026年2月から2年間の改修工事でクローズ中です。ただし前述の北斎の版画のように、日本美術の展示自体がなくなったわけではありません。「日本館が閉まっている=日本美術が見られない」わけではないので、目当てがある人は展示替えの状況を事前にチェックしてから行くのがおすすめです。
ミュージアムショップも必見

新棟「David Geffen Galleries」の中には、LAの人気オーガニックスーパー「Erewhon」による小さなカフェも入っていて、コーヒーやスムージー、サンドイッチなどの軽食が買えます。展示を見て回って小腹が空いたタイミングでちょうどよく、館内でひと休みできるのがありがたいところ。

ミュージアムショップは、Matisseの図録からLACMAロゴ入りのTシャツ・トートバッグ、パステルカラーのキャップまで揃うラインナップで、会計前についあれこれ手に取ってしまう楽しさがありました。



ミュージアムのハシゴにぴったりの立地
LACMAが位置するMiracle Mile / Museum Rowは、徒歩圏内にAcademy Museum of Motion PicturesとPetersen Automotive Museum、La Brea Tar Pitsが集まるミュージアム密集地帯です。

あの有名なマンモスの像がのぞく池も、LACMAのすぐ隣にあります。
但し、La Brea Tar Pitsは2028年のLA五輪に向けた2年間の大規模改修のため、2026年7月から施設は休館中です(屋外の発掘現場は見学可)。
Academy MuseumとPetersenは今回も相変わらず見応えがありました。
休業日・営業時間が異なるので、3館ハシゴをする場合は、事前にチェックしておきましょう。
アクセスは、LACMA地下Pritzker Garageの駐車場(平日フラット料金$25)に停めるほか、2026年5月に開業したばかりのMetro D Line(旧Purple Line)延伸区間を使えば、Wilshire/Fairfax駅からLACMAの目の前まで一本です。Downtown LAから電車で来られるようになったのは地味に大きい変化です。
2026年のLACMAは、新棟David Geffen Galleriesのオープンと、Metroの新駅開業が重なって、これまでとは違う「気軽に行ける美術館」になっていました。
David Geffen Galleries、BCAM、Resnick Pavilionと3つの建物をハシゴするだけでも1日仕事になるボリューム感で、無料のJazz at LACMA、無料入場の時間帯もあわせれば、何度訪れても発見のある場所です。
Academy Museum、Petersenと合わせて、Miracle Mileを歩き倒す一日をぜひ。
Los Angeles County Museum of Art(LACMA)

1961年に設立され、1965年にWilliam Pereira設計の建物群へ移転しました。以来、西米地域最大級の美術館として15万点以上のコレクションを蓄積しています。2020年、老朽化した東棟(Ahmanson Building、Bing Center、Hammer Building)を解体し、建築家Peter Zumthor設計の新棟「David Geffen Galleries」を建設。2026年5月に一般公開され、現在の姿に。
- David Geffen Galleries(新棟)、BCAM、Resnick Pavilion、Pavilion for Japanese Art(現在改修中)の4棟と、屋外アート・広場からなる複合施設です
- 土地・建物はLos Angeles郡が所有し、運営は非営利団体Museum Associatesが担う、郡立・非営利運営のミュージアムです
- 現代美術、ラテンアメリカ美術、アジア美術、アフリカ美術、古代エジプト美術など幅広いジャンルを網羅しています
- Chris Burdenの《Urban Light》、Michael Heizerの《Levitated Mass》など屋外の常設アートも人気です
- 毎週金曜(5〜10月)夜には無料コンサート「Jazz at LACMA」を開催しています
- 月・火・木曜15-18時、金曜15-20時はLA郡住民入場無料です(要ID、水曜休館)
- Membership:年3回以上訪れる人は年会員がおすすめです(Individual $90/年、Dual(2人) $150/年)。一般入場が無料になるほか、追加チケット(1回の訪問で最大2枚)が30%割引、ストアでの買い物も割引(通常10%、会員セール時は最大20%)になります。
- 住所:5905 Wilshire Blvd., Los Angeles, CA 90036
- 公式サイト:https://www.lacma.org
- Instagram:@lacma

