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サードウェーブを生んだアメリカ西海岸の
コーヒー文化概要

12/29/2015

コーヒーブームはこれまでに3回あった!

アメリカではこれまでに2回のコーヒーブーム、トレンドがありました。最初のブーム(ファーストウェーブ)は戦後、19世紀後半。最高級とはお世辞にも言えない大量生産の豆を浅煎りし、薄めに入れて飲む、いわゆる「アメリカンコー ヒー」が生まれた時代です。ちなみにこの時代のコーヒーの主役が、「アメリカの家庭でコーヒーと言えばこれ!」という 「Folgers」や「Maxwell」のコーヒー。大きなプラスチックの容器に大量のコーヒー粉が入ったこれらの製品は、今でも変わらず、あまり味にこだわらない大多数のアメリカ人にとっての定番です(笑)。

1960年代に入ると、あまりおいしいとは言えない薄いコーヒーに反発するように、高品質の豆を深煎りしたコーヒーを出すお店が現れ始めました。最初にこのスタイルを流行らせたのは1966年、カリフォルニア州バークレーで開業した「Peet’s Coffee & Tea」と言われています。この影響を受けて1971年、シアトルに1号店をオープンしたのが「Starbucks」。1980年代後半から90年代にかけてエスプレッソにミルクを入れた「ラテ」が大人気となり、同じくシアトルの「Tully’s Coffee(タリーズコーヒー)」、「Seattle’s Best Coffee(シアトルズベストコーヒー)」などと共に、“シアトル系コーヒーチェーン”がアメリカのみならず世界中で大流行しました。これが2回目のブーム(セカンドウェーブ)です。

 

「サードウェーブ」コーヒーの火付け役、「Stumptown Coffee Roasters(スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ)」

そして現在、アメリカはもとより日本でも流行している「サードウェーブ」と言われるコーヒーのムーブメントですが、この動きは90年代後半から始まりました。震源地については諸説ありますが、アメリカ西海岸は間違いなくその一つ。1999年、オレゴン州ポートランドに設立された「Stumptown Coffee Roasters(スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ)」が火付け役と言われており、彼らのこだわりがまさに、「サードウェーブ」コーヒーの特徴を代弁しています。

まず、「シングルオリジン」の豆を使うこと。これまでのコーヒーは、複数の農園で生産されたコーヒー豆がブレンドされ、それを国単位で銘柄表示して売られていました。しかし、「サードウェーブ」のコーヒーは、産地、さらには農園を特定し、そこの単一種の苗木から収穫されたコーヒー豆のみを使用します。そして、ワインと同じように、コーヒーの木の種類の違いによる味の違いを楽しみます。豆の良さを最大限に生かすため、ローストは基本的に浅煎り、これをドリップで飲ませます。シアトル系の強いコクのあるエスプレッソ系の味に比べると酸味が強く、さらにフルーツやナッツのような、複雑な香りも楽しめます。

次に、「直接買い付け」「フェアトレード」「サステイナブル」も重要なキーワード。「Stumptown Coffee Roasters」は、アフリカ、南米、インドネシアなどにあるコーヒー農園と直接契約し、豆を買い付けています。そして、彼らを定期的に訪問して、よりよいコーヒーの実を育てる新たな技術などを伝えるなどし、強く長い関係を結びます。驚くのは彼らに一般の相場の4倍近くの買い付け金を支払っていること(=フェアトレード)。その代わり、よりよいコーヒーの品質のため、多くのことを妥協せず要求します。これによって生産者は経済的に潤い、 技術もどんどん上がっていき、農園経営を長く続けていくことができますし、「Stumptown Coffee Roasters」も長年にわたって、高品質のコーヒーを提供し続けることができる(=サステイナブル)わけです。

ちなみに、アメリカ発信の「サードウェーブ」コーヒームーブメントの火付け役としては、この「Stumptown Coffee Roasters」のほかにシカゴが本拠地の「Intelligentsia Coffee & Tea」、ノースカロライナ州のダーハムが本拠地の「Counter Culture Coffee」があり、「サードウェーブコーヒーのビッグ3」と言われています。そして現在、彼らに影響を受けた「サードウェーブ」なコーヒーショップは全米、さらには日本を含め世界中に広がっているのです。

…というわけで、簡単ではありますが、これがアメリカおよびアメリカ西海岸におけるコーヒーの歴史です。西海岸にはポートランドをはじめシアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど、それぞれの都市にイケてるサードウェーブのコーヒーショップがありますから、ぜひ足を運んでみてください。また、日本でも ブルーボトルコーヒーが東京の清澄白河や表参道にオープンして大人気になっているほか、これらのお店の豆で購入できるものもあるので、ぜひトライしてみてください!

最後に余談ですが、「Stumptown Coffee Roasters」ではオリジナルのブレンドも作っており、エスプレッソ用のブレンドもあります。バリスタの友人に聞いたのですが、エスプレッソはミルクを入れてラテにすることが前提なので、シングルオリジンのコーヒーだとパンチが足りないのだそうです。また、オリジナルのブレンドはそのお店が独自のコーヒーに対する理解、解釈を表現した作品とも言えるので、シングルオリジンのコーヒーと共に、試す価値大です。

 

◉引用元:

  • Third wave of coffee」(『Wikipedia』)
  • Small Bay Area Coffee Roasters Spread Out」(『The New York Times』)
  • Our Story」(Stumptown Coffee Roasters)
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    Totti

    元West Coaster運営者&Co Founder。 LA在住歴10年超のアラフォー日本男児。日本では書籍や雑誌、Webメディアの編集および執筆、広告制作などに従事。現在はフリーランスの編集者&ライター。

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